映画「グリーン・デスティニー」

 舞台は清朝中国。所々、ストーリー展開に必然性のなさが気になった。派手なアクションシーンを繋ぐだけの筋書きか。それとも、観る人が観れば、揺れる竹林の上での格闘シーンにも深い意味(俗流精神分析的な解釈は別として、何かの葛藤とか?)があるのか?あるようには思えないが。それと、ヒロイン役チャン・ツィイーの時折みせる険しい表情に、中の人は案外かなりキツイ性格なのではないか、とか。
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「追記」
 中国は今も昔も多民族国家だ。清朝(1616〜1912)は、満州族の王朝で、多数派の漢民族を含む諸民族を治めていた。試みに、主要な登場人物の出自を整理する。
・剣の達人(と恋人)、漢民族。冒頭で道教漢民族伝統宗教)の修行を中断。
・貴族の娘、満州族。中程の回想シーンでの台詞。
・草原の盗賊、モンゴル民族。
・毒狐、不詳。剣の達人にとって、師を毒殺し秘伝の書を盗んだ宿敵。
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 次に、物語の主要アイテムは、剣と櫛だ。中国の名剣伝説(故事)に

干将莫耶(かんしょうばくや)」
中国古代の二名剣。呉の刀工干将は呉王の嘱により剣を作るとき、妻莫耶の髪を炉に入れて初めて作り得た名剣二口に、陽を「干将」、陰を「莫耶」と名づけた。

がある。この故事と道教の陰陽から、剣と櫛は、同等なモノの二つの相とみなすことができる。おそらく、剣の方は、中国王朝における漢民族の正統性を象徴する。以上を(当たらずも遠からずとして)踏まえるならば、冒頭からラストシーンまで、それぞれ何かしらの意味があるのだろう。