王子さまは たいそう ご立腹 1998.1.18-2005.4.23
ある日のこと 王子さまは たいそう ご立腹のご様子
芝居の筋書きも忘れて わめき散らしています
「お前は 嘘の付けぬ女か!
それとも器量自慢か!?
尼寺へ行け! 尼寺へ!
婿を取るつもりなら バカがいいぞ! バカが!」
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お姫さまは お姫さまで
悲しい気持ちが だんだん 怒りに変わってきます
「わたしのこと わたしの気持ち なにも知らないくせに
みんなに わたしのこと 好きだ好きだ好きだって 言いふらしてるくせに
少し冷たくしたら とたんに これなんだから、、、
もう 許せない 許せない 許せない」
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王子さまは かつて お姫さまが嘘を付いたと思っているのです
でも ホントのところは けして お姫さまが嘘を付いたのではなくて
王子さまの方が とても せっかちだっただけなのです(きっと?)
「小悪魔め よくも 俺のハートを引き裂いてくれたな!」
「なに言ってんのよ あなたのハートなんて もともとボロボロじゃない」
「うっ! そうか さよならだ」
「さよならぁ」(←この「ぁ」が微妙な後を引く語尾だったりする)
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王子さまは しばらくして 冷静になると すごく後悔しました
一言 その気持ちを伝えたくて 伝書鳩を方々に放ってはみましたが
お姫さまは 結局 読んではくれなかったみたいです
王子さまは 切なくて 切なくて どうしようもなく切なくて
真っ昼間からお酒を飲み過ぎて とうとう酔いつぶれて寝てしまいました
一方 お姫さまは「どうしようかしら」 と少しだけ 迷っています
「いっそ? いえいえ それはダメ
それとも 王子さまを 許してあげる? それはイヤ、、、」
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―――てなことを(勝手に想像して)書いている王子さまは やはり
少し勝ち気で すごく可愛いお姫さまが 好きで好きで好きなのです
(彼女は まさにお姫さまだが この僕はけして「王子さま」ではない)
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「追記」
「誰に対しても居心地悪さを感じさせないのが紳士だ」と言う。俺は今も昔も紳士ではない。彼女は、優美で気さくなところもある淑女だった。彼女に再び巡り会えたら、と思っていた頃もあった。今もお目出たくもそう思っているかもしれない。だが、俺は知っている。彼女との隔たりこそが、彼女への恋心を構成していることを。