花粉症

もう昔のことだ。何かの飲み会帰りの終電だったか。扉にもたれかかり、目に涙を浮かべて、遠い夜の闇の彼方を見ている若い女がいた。したたかに酔っ払っていた俺は、ついボソッと声に出した。
「悲しいのはキミだけじゃない。」
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若い女は、気怠い様子で振り向き、ガラスで出来ているかのような冷たい眼差しを俺に向けると口パクした。
「タコ」