映画「戦場のピアニスト」

 いかにも感動的な戦争映画は、勝ち残った者、生き残った者の(に都合の良い)伝聞や記憶に基づいて構成され、他にも様々な制約の下に制作される。この映画にしてみても、日付入りのノンフィクション仕立てではあるが、けして史実ではない。自伝小説というフィクション(虚構)をベースにしている。
 誇張・省略・歪曲・偽造された伝聞や記憶が広範囲に共有されることがあり得る。逆に言えば、史実自体が、誇張・省略・歪曲・偽造された伝聞や記憶と腑分け不可能なキメラとして成り立っているのだ。